医療英語:否定表現、非理論的表現の落とし穴

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医療英語:否定表現、非理論的表現の落とし穴

 

医療英語:否定表現、非理論的表現の落とし穴

 

日本語には英語の否定語no- (nothing, nobody, nowhere, etc.)や、準否定語(few, little, less, least, hardly, etc.)に相当する言葉がありません。

 

そこでI don’t have any brothers. という形式の言い方は日本人になじみがありますが、I have no brothers.という言い方は日本語にないので、少しとまどいを感じます。

 

しかしこれは翻訳の場合に問題なく訳すことができます。どちらも全く同じ意味で「兄弟がない」です。ただnotを使った前者の方がより口語的です。Nobody knows it.(だれもそのことは知らない)。He has few friends.(あまり友人がいない)、I can hardly believe it.(そんなことはとても信じられない)などは正しく訳すことができます。

 

否定語や準否定語が日本語の中に欠けていることは上の通りですが、それらが上の例文の場合のようにそれぞれ単独に用いられた場合にはその意味を正しくとって正しく訳すことは日本人にとって決して難しくありません。

 

しかしそれら否定詞や準否定詞が比較級(more, less)と結びついて使われているような構文になると、日本語に欠けているものが二重に重なるので、難解になり、翻訳者を迷わせ、つまずかせ、誤訳させることになります。以下その例を二、三挙げてみます。

 

I could not have asked for a more perfect day for a garden party. ガーデンパーティーにこれ以上完璧な日は望めなかったでしょう。(最高のパーティー日和でした)
I expected nothing less than a cynical remarks from him. 皮肉くらい彼なら当然言うだろうと予測していた。
He does not like jazz, more or less. ジャズは全く好きでない。

 

いまひとつ翻訳で問題になるのは英語の非理論的表現です。

 

非理論的表現はどの言語にもつきもので、例えば日本語の「負けずぎらい」(=負けるのがきらいな人)、「その画を見ない前は何とも批評できない」における「〜しない前には」(この場合英語ではbefore I see itであり、before I don’t see itとは言わない)などがその例です。

 

次に例を示します。

 

There were quite a few students absent from class today. 今日は大勢の生徒が授業を欠席した。(quite a few=many, a lot of)

 

If you are a good boy I shouldn’t be surprised if Santa Claus didn’t bring you a nice present on Christmas Day. いい子だったらサンタがすてきなプレゼント持って来てもちっとも驚かないよ。(それで当然だ)。

 

Best(最高)なものは一つしかないはずであるのに、Paris is one of the most beautiful cities in the world.とか、Tokyo and Osaka are the two best known cities in Japan. とか、Hemmingway, Faulkner, and Steinbeck are the three best known American writers. のように言い、いずれも正しい慣用英語です。言語とは非合理なところもあるという例です。

 

あるいは二重否定構文、つまり否定語を二つ、あるいは三つ重ねた表現もわれわれ日本人にはまぎらわしいことがあり、翻訳者を悩ませます。
というのはIt is not uncommon. = It is common. (めずらしいことではない = あたりまえのことである)。I’m not unaware of it.= I’m aware of it.= I know it.= I’m to some extent aware of it.(そのことを知らないわけではない/知っている)などの例からわかる通り、一つの言葉に対して二つの否定語がついている場合は意味は肯定になります。

 

ただしそれは婉曲な迂回表現の一種で、おとなしい、控え目な表現法です。ところが無教養な人の間では二重否定で否定の気持ちを強調します。例えばI haven’t seen nobody.(ほんとにだれにも会わなかった)、I can’t hardly believe it.(そんなこと、とてもじゃないが信じられねえ)、I cannot find her nowhere. (どこにもいねえ)、Nobody never tells me nothing.(ほんとにだれもおれにこれっぽっちもなにも言ってくれねえんだ)。正しくはI haven’t seen anybody. I can hardly believe it. I cannot find her anywhere. Nobody tells me anything. です。

 

ときには教養ある人でもI can’t help but laugh. (わらわずにはいられない、正しくはI can’t help laughing.)のような二重否定で否定の意味を強調する。以上要するに二重否定が肯定になったり否定になったりすることがあり、翻訳者は前後の文脈や、情況を判断して正しく読み取らねばならず、油断できません。

 

また部分否定も油断できません。例えば否定文中にall, every, bothなどあったり、not always, not entirely, not necessarily があるのが部分否定です。All men are not honest. は、「人はみんな正直でない」とも、「人はみんながみんな正直であるとは限らない」ともとれます。

 

Not all men are honest.ならば明らかに部分否定で<人はみんながみんな正直であるとは限らない>と訳せばよいわけです。

 

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